『剣が君 for V』レビュー! ネタバレ無し&有り
こんにちは、乙女ゲーム大好きぽぽたんです。
ようやく名作と名高いPCゲーム『剣が君』の移植作品である『剣が君 for V』をトロコンできましたので感想です。
一言感想を述べるなら、「歴史乙女ゲームの名作!驚くぐらい面白かった!…ただ歴史ものに興味のない人はどうだろう?」という感じです。
いやー、なぜプレイを避けていたのか?というぐらい面白かったのでご購入の参考にしてくださいますと幸いです。
ちなみに私は悲恋ものと耳にしていたのでなんとなく手が伸びなかったのですが(あまり得意ではないため)悲恋要素もあるにはあるけれど基本愛の力で打ち勝つハッピー世界だたので安心してプレイしてくださいね。
【ネタバレ無し】レビュー
簡単な作品紹介
舞台は徳川幕府三代目将軍が治めるお江戸の町。
主人公は偽のお姫様として花嫁行列へ参加することになる。
駿河国(現在の静岡県)までの道中、偽の姫を守るのは素性の知れない6人の浪人たち。
江戸幕府の思惑に揺さぶられつつ、そして浪人達の持つ数奇な運命に巻き込まれて、主人公の平穏な日常は変わりはじめていく。
プレイステーションVita専用ソフト
『剣が君』(けんがきみ)
総プレイ時間:35時間(1人√あたり5~6時間)
攻略キャラクター数:6人
簡単なレビュー
乙女ゲームが好きならこれはやっとけ!と真っ先に挙がるソフトの1つである『剣が君』。
プレイした後こそしみじみと伝えたくなります。
「乙女ゲームが好きならこれはやっとけ」。「やっとけ」本当に。
まず原画を書いていらっしゃる詠さんのイラストがかっこいいのにフェチ。エロティック。
このイラストはヒロインが攻略キャラの口元についている米粒をとってあげるというシーンなのですが、
わざわざ指が唇に触れているところ、こだわりありすぎないか?
ほら、指の先や腹が少しだけ触れているところなど、なんというかフェチズムをかんじませんか?
またこのイラストをご覧ください。
攻略キャラが主人公を押し倒してしまい、アッ…////なシーンなんですけれどこちらもフェチがプンプンします。
よくよくみてみると、キャラが主人公の頭を下から覆っているのですよ。
つまり肘から下を主人公の背に通し、手のひらで頭を支えているのですよね。
ただの床ドンじゃないのです。
うーん、フェチ。こだわりを感じさせます。
公式に公開されていないどのスチルも気迫というかこだわりを感じさせるものばかりなので、是非とも美麗イラストでゲームをお楽しみください。
良作ゲームの特徴として、「人間関係がギクシャクしていない」・「サブキャラクターが良い」があげられると思いますが本作はそれが当てはまります。
まず攻略キャラクター6人同士の仲が良い。
最初こそギスギスしていますが、個別√に入るころになれば仲間のために一肌脱いでくれるような気の良い奴らばかりです。
人間やはりゲームの中の世界とはいえ、攻略キャラ達の対立にあれこれ奔走し続けるのは精神力が削がれます。そればかりにシナリオがさかれるのも本末転倒です。
攻略キャラと主人公のために、仲間たちが頑張ってくれる姿というのも感慨深くて好きです。別の世界線では主人公とくっついているのは自分というのがもどかしくもある。
サブキャラも本当に良くてですね~、どの人も好きです。
主人公と攻略キャラ達の助けとなったり、対立したり、物語の登場人物としてしっかり活躍してくれるので”そなえ物”感はありません。
個人的には松平辰影がぐっと来ました。
ホームドラマ江戸城で大活躍してくれる人なのですが、√によっては善にも悪にもなります。
でも辰影はただ真面目に仕事をしているだけなんですよね。ただデレ方を知らないツンなだけなんですよね。
そういうキャラ達の良いとも悪いとも言い切れない二面性をさらっと描いているので、物語に深みが増すのかと思います。
舞台は江戸時代初期で、公式サイトには小難しい作中用語が並んでいて、「初心者にはとっつきにくそう」な印象を与えますが、大丈夫だ問題ない。
この小難しい用語も江戸時代の雰囲気も、プレイ総35時間をフルに使って説明してくれるため脳みそが溶けて理解力が大幅にない私にも大丈夫でした。
私は作品の導入に世界観や用語説明をぶっこむ系ゲームはだいたい肌に合わないのですが、本作は違った。
最初の10分前後は我慢してプレイしてみてください。そのときは理解せずとも、ふ~んと右から左で聞き流しても、ちゃーんと後から説明してくれます。
親切シナリオ…。ありがたい…。
シナリオも「切ない系」とか「悲恋」とか「バッドエンドが美味しい」などをよく耳にしますが、嬉しい楽しい大好きなハッピーハートフル世界に近かったです。
もちろん2人がくっつくまで、そして恋人に近い状態になっても、苦難は絶えずやってくるので「う~ん切ない」とはなるのでそういう作品が好きな方の欲望を満たしてくれると思います。
そしてバッドエンドは切ない…と涙がこぼれてしまうような感じで…。
最も良いハッピーエンドは「そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」とアフレコを入れたくなるぐらい良い雰囲気にまとまるので安心してください。
ちなみにエンディングは4つあり、ハッピーエンド2つ・バッドエンド2つという感覚で大丈夫だと思います。
シナリオも確かにキツイ瞬間というのもあることにはあるのですが、しんどすぎてゲームを投げてしまうようなことはなく、飴と鞭がしっかりしていました。
辛いシーンの次には必ずお互いの心を確かめるシーンが挿入される、それが私のようなまったり乙女ゲーマーの慰めになる。
た、ただですね、剣が君は恐ろしく硬派かつ健全な世界観なので、現代の乱れ切った乙女界隈の感覚での甘さは無いといってもさしつかえありません。
1人甘めだと評価されるキャラもいますが、別の作品で登場していたならば「もっとイチャイチャ描写を増やしてください(#^^)」となるレベル。
イチャラブ要素には期待しない方が良しです。
でも恋愛要素が無いというわけではありません!
もうね、お互い想いあっているのにくっつかない…くっついてもなかなか一緒にいられない…そんな2人の葛藤が手にとるようにプレイヤーへ伝わるので、とにかくもどかしい。
ただ攻略キャラクターは主人公のことを大切に想ってくれているので、キュン…とします。静かに萌えるタイプのゲーム。
また歴史ゲームは全くダメ!という層におすすめできないかもしれません。
どれだけシナリオが良くても着物を着ている時点でだめ、刀のうんちくにあれこれ話がさかれるのはちょっと…という方には無理をしてすすめません。
あと死ネタは完全に無理、推しが死ぬときは一緒に自分も墓に入るわという方にもおすすめしません。
だけどなあ!
逆に言えば、上記以外の方には全力でおすすめします。
良質な歴史ゲームがしたい方なら、時代小説が好きな方なら、すんなり世界観になじめるかと思いました。
とにかく未プレイでシナリオが良い作品に触れたい方には、是非とも手に取ってほしいなと思わせる作品でした。
正直これだけ素晴らしいレビューが出そろった作品を記事に起こすべきか?と悩みましたが、良い作品だからこそレビューの数をささやかながらグーグル検索に1つ増やし、もっと人の目に触れるようになるべきか?と思い書いた次第です。
おすすめの攻略順
九十九丸を最後にした方がよい、と教えていただいたのでそうしてみましたが、個人的な感想はどちらからでも良いかも?と思いました。
好きなキャラからでも良し、気になるキャラだからこそあとに回しても良し、三方良しな作品です。
ですがあえて言うなら、おすすめは下記のとおりです。
実彰→縁→鈴懸→左京→螢→九十九丸
世界が優しい順です。なんとなく後はしんどくなっていきます。
よろしければご参考頂けましたら幸いです。
下記からはネタバレをバンバンするタイプの感想です。
【ネタバレ有り】感想
余談
君√の第六章の章幕画像?が好きで全てスクショを取っていました。
(口がさりげなくωになっているのも良い)
恋の喜びを知った顔なので、どのキャラも凄くいろんな意味でグッ…とくるのですが。。。
ここで縁をご覧ください。
(日頃のおこないが悪い)
最初は「ええやん…」なのですが、だんだんと酔っ払いの表情に見えてきてなんだかキマリが悪くなってきました。
主人公ちゃんが縁が昼間から酔っ払ってもとやかく言わないのは、この表情が可愛くて好きなんだろうな…などとダメ男にハマった女の気持ちを慮っていました。
ちゃんとお酒を控えてほしいって怒りますけどね、母親のように怒りますけどね。
縁といえば、この用語解説も好きです。
(ハートフル♡ホームドラマ江戸城)
『不如意になったときにだけ実家に戻るような男はどうかと思う。』という制作側の純粋な感想に笑いました。
縁は風来坊というか、本人が自暴自棄なのでしょーもない行いも多いのですが、縁の良さをちゃんと知っている人が周囲にたくさんいてよかったなあと思いました。
他のキャラは江戸に頼りもないキャラばかりですしね。
下記からはバンバンネタバレするタイプの感想です。
未プレイの方は是非ともご購入ください!良い作品です。
全体的な感想
いやー、どうして今までプレイしていなかったんだという面白さでした。
『剣が君』の評判はもちろん耳にしていましたし、いつかやりたいなあと思ってはおりました。
ですがひっかっかっていたのは『悲恋』の二文字。悲恋を前面に押し出している作品ならかなりプレイをしていてしんどいわけです。
私は基本的に優しい世界が好きなので、悲恋ということはつまり、2人が恋もままならないような状況に追い込まれる世界で、2人の恋は祝福されないわけですね。
ですがプレイしてみてもう手のひら返しです。
面白かったです、寝る間を惜しんでゲームをしました。
丁寧に書かれたシナリオは、作品の完成度を各段にあげていますね。
どれだけシチュエーションが良くても、イラストが良くても、展開が雑だとなんだか手放しで褒められないわけですが、本作は一つ一つの展開をしっかり繋いでいるので作品に問題なく没入できました。
シナリオに関しては丁寧すぎるとしか言えません。世の乙女ゲーム全てがこれぐらい質の高い地文がかけるようになればいいのに…。
またどのキャラクター達も魅力的でしたね~~~~~~~!ヨカッタ~~~~~~!
良いゲームは全く自分の趣味ではないキャラも、しっかり魅せてくれるし、主人公が惚れるような良いところを描いてくれるし、ヨカッタ。
(急な兄弟プレイで笑いました。そして将軍様へでもため口の鈴懸、さすがの高尾の男)
家光、良い味が出ていましたね。
徳川忠長を失脚させ自死へ追い込んだ存在として、最初の内はその優雅な姿にも裏があるのでは?と恐恐としていましたが、それこそ辰影と同じで、彼の最良の選択であっただけなのですよね。
近寄れば情の深い男、遠目からみれば無情な施政者。
こういう多様な側面をそれとな~くみせるのが、キャラクターをより魅力的に演出できるんだなあ。後はヤンキーが雨の日に猫を拾う的なやつですね。
また本作のMVPは主人公父こと香夜パパ!
娘を奉公へ出すこともなく、商いもそれなりに頑張り、男手一つであんなに健気な娘を育てた。
しかも素性も知れない浪人どもに手塩にかけた娘を託す…
身元保証人もいない、家もない、定職もない、合コンへ行ったらヒモ予備軍認定されそうな攻略キャラ達を、香夜パパは人柄のみで判断する…
奇魂エンドの九十九丸ですらちゃんと面倒をみているので、懐の深さが尋常じゃない。
(香夜パパ、左京が大好きすぎる問題)
でもそんな人間のできた香夜パパにもお気に入り度が違う…!ということで独断と偏見に満ちた婿ランキングは下記のとおりです!
- 左京(作中で最もべた褒めされている)
- 実彰(婿養子入りした後は鼻高々の存在である)
- 九十九丸(春以降もいてくれたらなあ…とのコメント)
- 縁(あんな酔っ払いでも、部屋が空いているから一緒に住んだらいいという香夜パパよ…)
- 鈴懸(褒める言葉はないが、あの鈴懸の人柄なのできっと認めているんだろうなあ)
- 螢(最初はべた褒めだが、後半は仕方ない。しかし手紙の仲介役になるエピソードはええなあ)
この父あっての主人公。
攻略キャラ達は好いた女を育てた聖母ならぬ聖父を崇めるんだよ。
と、まあ私の感想を読んで下さる方にはすでに感ずいていらっしゃるかと思いますが、作品としての完成度が高いので、何をいまさら話せば…という状態なのも事実。
面白かったから未プレイの人は是非やって!という感想以外、書けないのです。
伏線もちゃんと回収し、気になるような世界設定も全て説明されている。うーん、よくできている。
上から目線になってしまって大変申し訳ないのですが、こういう境地に至るような乙女ゲームがたくさんプレイしたいですね。
攻略キャラ個別感想
九十九丸
最初に謝らせてください。
(だってこの顔だし…)
天海さん、黒幕だと思っていました。大変申し訳ありませんでした。
普通の良いおじちゃん?で心底驚きました。九十九丸やヒロインに助言をくださりありがとうございました。
九十九丸はなんとも不思議な雰囲気があり、彼を一言で表現するのは難しいですね。
感想を書いているいま、かなり考えあぐねています(笑)本作では実彰につづいて好きなキャラなのに…。
路銀を使い果たして倒れたと思ったら、お店でバッチリ接客ができたり、ちょこちょこ女性慣れしていない描写があるとおもえば、きっちり主人公をからかったり…。
かなり落ち着いた声なのに九十九丸はかなり女性的な?かわいらしい顔をしているなあという印象だったのですが、そりゃあ大きくなるもんな!大九十九丸は普通のイケメンで痺れました。
そんな九十九丸、バッドエンドは中々力強くてかなり痺れました。
奇魂EDなんてかなり後味悪いし、香夜パパ可哀想でなんともいえない気持ちになりました。
他のキャラの荒魂・奇魂EDは、割と萌える余地があるといいますか、なんだかんだ切なさに身もだえする余裕はあるのですが、九十九丸は悲運不運のバーゲンセールで「堕ちるとこまで堕ちたな…」感がありこれぞバッドエンドでした。
和魂EDもガッツリバッドエンド…と思わせておいて、実はあれはあれでハッピーエンドなのでしょうか。螢の和魂EDはそこまでは後味悪くなかったぞ!
また、幸魂ED、最高でしたね。
私の乙女ゲツボの1つが、ヒロインと攻略キャラが二人きりで飲食店を切り盛りする、地域密着型のお店なら倍率ドンなのですが、も~~~~~~~ドツボでした。
美味しいごはんがあって、懇意な客たちの笑顔あふれて、足りないところは2人であれこれ工夫しあって、満ち足りた幸せにつつまれた世界…。ハッピーエンドだからこそたどり着ける楽園…。
2人仲良く永遠に暮らしてくれ~黄泉へ行っても一緒に極楽浄土へ行って;;;
九十九丸はかなり人当たりが良いので、旅の途中もずっと主人公のことを気にかけてくれているのが凄く嬉しかったです。
わかりやすい好意は人を救うんやで…。
(日本人が大好きな「月がきれいですね」奴~~~~~~)
そういえば九十九丸の着流し姿がとても好きなのですが、数シーンでしか使用されなかったのがもったいなかった!
この若旦那感たまらないし、主人公と並ぶと新婚夫婦特有のいやらしさ初々しさがあってたまら~~ん。着流しはエッチロマン。
師匠もフェロモンむんむんでしたが着流しでしたしな。
そして声優の小野友樹さん、こんなに味わいのある不思議な声が出せるのですね。凄い。
人当たりも良く、親しみやすいはずなのにどこか変わった雰囲気の男性。
それこそ九十九丸なわけで、そんな九十九丸を的確に演じていらっしゃって凄い。
大きくなった大九十九丸とは演じ方が異なるのでいやー、一瞬でファンになりました。
九十九丸は本当に線香の香りが似合いそうな(笑)、不思議な男性ですね。
好きなんだけれど、良いところをうまく伝えられないのがもどかしい~
・螢
乙女ゲームにおける最初にヒロインへ冷たくあたるキャラの√はかなり糖度が高い説を常々感じるのですが、螢もそんな感じでしたね~!
他作品と比べると児童書かよという健全さでしたが、なかなか甘酸っぱいエピソードが多くてニコニコしながらプレイできました。
螢、キャラデザをされている先生の趣味が如実に出ている良いキャラでしたね。
色黒+色素の薄い髪色+角の位置+太めの眉+肩の露出+からの脇。
(この脇からはエッチなロマンを感じる)
螢の√がプレイヤーとしてある意味一番揺さぶられました。
私の乙女ゲーム地雷が三角関係なのですが、可愛くて気立てもよくておっぱいも大きい幼馴染の女の子が登場したときにはもう「ここから江戸が修羅の国になるのか…」と死にそうでしたが、そんなことにならなくてよかったです。
ありがとう…ありがとう…相手の女の子が当て馬になるのも苦手なので…
螢の√は親族が多く出てくるので、縁√とはまた違った正統なアットホーム感があってよかった。
おばあちゃんから刺繍を習うシチュエーションの破壊力凄いですからね、嫁入りして数か月経った新妻かよと震えあがります。
螢の√の奇ENDヨカッタですね。
周囲の仲間たちに支えられる2人というシチュエーションが大好きなので、心が温まる素敵な終わり方でした。食べ物に例えるならビーフシチュー。
きっと困難は山積みでしょうが、2人一緒なら大丈夫、乗り越えられるよという安心感があるので良いものです。離れようとする実彰とは大違いだわ。
和ENDはなかなかしんどい話でしたが、前述している香夜パパが文通を手助けするエピソードが好きなのでチャラにしたいです。
後日談の内容になってはしまいますが、お互いの存在以外なにも持たない2人があばら屋で寄り添うシチュエーションは萌のかたまりなのでチャラにしたいです(二度目)。
(この旅装束がほーんと好き)
螢はまだ若くどうしても自分の方向へ意識が向いてしまうので気難しく見えたりぶっきらぼうになってしまうのですが、きっと経験を積んで歳をとれば穏やかで面白おじさんになるのだろうなあ。金四朗のような…。
・黒羽実彰
旅の道中ではしっかりしているまとめ役な雰囲気を漂わせているのですが、個別ルートでは「意外と抜けているところもあるのだな」な可愛さを感じ、他キャラのルートだと「なごみ枠かよ…」な可愛さを感じ、結論・本作随一の萌キャラ実彰。
実彰が隠れキリシタンであることを知った時こそ、おいおい大塩平八郎かよと反体制側に回るルートか?とヒヤヒヤしましたがそんなことなくてよかったです。
実彰は意外と自分の感情に鈍感なところが味わい深くて好きです。
最初は主人公へ祈りの言葉を教えることすら嫌がった実彰が、父の残した本である聖書(おそらく)を読み聞かせてあげるあたりのお話が好きです。
「前は巻き込みたくなかったが、今はわたしのことをあなたに知ってほしいと思っている」という言葉がすらすら出てくる実彰…なごみ系か?
実彰は存在が希薄というか現実味のない浮いた存在のようにみえますが、意外と地に足をつけた人間臭い奴で好きですね。良い。
(まだ付き合ってすらいないのに子どもの話をする実彰…家族に憧れているんだろうと涙出るはずなのに生き急いでいるなあとちょっと笑ってしまった)
二度目になりますが、乙女ゲームにおけるドツボの1つが2人で飲食店をきりもりすることなのですが、いや~~~~~~~~~~和魂END本当に良かった。
人を殺す剣を握ることを辞めた実彰がたどり着いたのは、人が生きるために必要な食事を多くの人に振る舞うこと。
実彰自身も話してはいましたが、これだけ所帯じみた生き方をできるとは…と本人もプレイヤーも驚きました。夢かと思った。
ありがとう公式。
幸魂ENDは信仰に生きることが許される終わり方なので、実彰自身にとって生きやすい結末だなあと思いました。
母が処刑される原因となった信仰なのに、実彰は捨てることができなかった。神というか”祈る”という儀式は彼の生活の一部になっていたから…。
乙女ゲーマーが息をするように推し語りをするのと一緒なんだよなあ。やめられないんだよなあ。
たどり着いた場所が彼らにとって終の棲家であり、安息の地であり続けることを願うばかりです。
長崎の五島なのかな。
実彰、個別ルートを終えた時も満足感が高かったのですが、ほかのキャラのルートでもちょこちょこ活躍してくれるので大満足でした。
・縁
旅の道中では「頼りにならなさそうにみえて、意外としっかりしている」というキャラでしたが個別ルートに入った途端、「頼りなくみえて、その通りまったく頼りにならない」とかいう年上キャラとは思えない失態に継ぐ失態に凄く笑いました。
昼間からお酒飲んでへべれけになるのことは、江戸どころか新宿ゴールデン街でも許されんぞ。
縁の救われるところは家族揃って縁へ甘いところで、どのルートでも縁は帰りたくないはずの場所にいる人々に助けられていました。
まさしくホームドラマ江戸城。
次期将軍候補が昼間から酒を飲んで城下を歩くことも、暴れん坊将軍のように身分を隠した正義の味方になることも、主人公と東北で農業をすることすらも許す家光よ…身内に甘すぎないか…
人には適材適所というものがあり、縁のいたい場所は御簾の向こうの将軍の座ではなかったわけですが、幸魂ENDの生き生きとした縁は本当によかったです。
(新婚は良い)
縁√は主人公がしっかりやさんで、カカア天下大好きマンとしては中々よかったです。
東北へ香夜パパを連れていくのもとてもよい…家族付き合いしっかりしているのは良い…。
剣√は縁が自分を捨て、ただ江戸のために生きるお話しなので、今まで縁を守っていた人たちにも切ない話だなと。
どうしても信念に生きると悲しい結末が多くなってしまうのは、自分をかえりみないことで周囲をも不幸にしてしまう悲しい連鎖がおきてしまうからだろうなあ。
でも奇魂ENDは特殊シチュエーションで好きな人は好きだよなあ!?と震えました。携帯小説が流行っていた時代に青春を過ごしたので、ああいう話はだいたい好きです。
荒魂ENDの後日談も、辰影さま…となりましたので良いです。きっと主人公と辰影の運命が交わることはないけれど、その淡い感じがぐっ…ときたことだけは報告致します。
遙かなる時空の中で3に登場するサブキャラ・藤原泰衡は15年後に攻略キャラクターへランクアップしましたので…もしものもしもがあれば是非とももしもしてほしいですね。
(左京ルートのシーンですが、こんなんでも許される縁はすごいわ)
縁のことを罵倒しかしていないようにみえるこの感想ですが、笑った顔が可愛いのでダメ男にハマる主人公の気持ちがよくわかりました。
いや縁好きですよ、生真面目すぎてああなってしまったんだろうなあというのがよくわかる…。真面目なキャラは大体好きです。
・鷺原左京
こいつは絶対ヤバい奴だと共通ルートをプレイした人は必ず思うだろう…。
実際には意外と向こう見ずで考えるより動いてみるという若さを感じるようなところもあれば、学があって子ども好きという一面も垣間見える良い子でしたね。
左京の向こう見ずエピソードで好きなのが、腕を負傷したときに焼酎を吹きかけて裁縫針で縫うというジャッキーチェンの世界で生きているようなことをしだしたときですね。
つば入りの焼酎は膿んで大変なことになるぞと心配していたら案の定鈴懸大先生にお世話になることになってしまうので、左京って意外と理性的ではないなとしみじみしました。
彼に考える時間的余裕があれば(正確に言えば、復讐を一刻も早く遂げたいという気持ちがなければ)もっとまともな対応したと思うんですよね、鈴懸に頼るとか…(笑)
まあ彼には精神的余裕もないので、鈴懸に頼ることすら嫌がるわけですね。。。
年端もいかない雅な少年に背負わされた悲運は、やがて少年自身を狂わせていく…な左京ルートなわけですが剣ルートは悲しかった。
可愛がっていた矢ノ彦を傷つけてしまう、お互いにとってなんて悲しいことだろうか。
悲魂の後日談で、つかの間の夢の中に健在である家族の存在が出てくるところなどただただ辛いですね。あのエンディングの主人公は聖母かよというぐらい左京を包み込んでいるので愛の力ってすごいな~となりました。
他のルートもそうなのですが、君ルートは剣やこれまでの信念を捨てるお話なわけで、復讐に狂わされていた左京がようやく人として生きていけるのはもちろん嬉しいわけで、同時に斬鉄を殺さなければ左京の心や心を救うことができないというのはこれまで左京がどれほど復讐に心血を注いだのかというのがわかることなので、なんというか悲しい人生だな左京…幸せになってね…。
そして和魂END。
乙女ゲームで参勤交代という単語を初めてみました。
一国の王子さまである左京に嫁ぐとはつまり…という現実を突きつけられてちょっと笑ってしまいましたが、かなり切ないわ。
(ちゃんと嫁入り道具の羽子板を持っているのが切ない)
子どもの姿もみれて美味しい後日談でした。ただ香夜パパに会うことは難しくなるのかな、身分差的な意味で…。
幸魂は寺子屋の先生と新妻になるので、凄いフェチみを感じます。
学校の先生の奥さん、なんというか不思議な魅力のあるフレーズです。
美味しい。これ以上の感想はいらない。
・鈴懸
プロローグでは他のキャラは何やら腹に抱えている人ばかりだなあという印象でしたが、鈴懸だけ人間と妖怪の暮らす優しい世界だったので、とても楽しみにしていたルートでした。
実際、最も安心してプレイできました。
鈴懸という人間の安定感は凄い。こんなに可愛いのにメンタル強すぎないか?
彼は目の前にある数々の命のために奔走していくわけですが、それだけで聖人君子感溢れる…これが山育ちの安定感…
可愛い系は急に大人の男になってしまうので、しばしば主人公やプレイヤーを戸惑わせるわけですが
この二人も戸惑ってるのには笑いました。マダラのアンニュイな表情もたまらんな。
2人と別れるエンディングはどれもなんだか一抹の寂しさが残り、より鈴懸という男の子を大人へと成長させるのだなと思いました。
ずっと一緒にいる幼馴染と別れ、故郷を離れ人の街に暮らし、好いた女と生きる。なんて鈴懸に似合わない単語なんだ。だがそれがいい、それでいい。
(可愛い系だからこそできる、ソフトな独占欲のみせかた)
九十九丸に嫉妬するくだりも鈴懸らしいな~となりながらも、それを「あらあらお邪魔でしたわねオホホ」とばかりに見守る九十九丸も良かったですね。
そして娘と付き合うなら私を打倒してからだ!というラスボス香夜パパと、毎日お団子づくりで親交を深め合うのも、鈴懸自身は緊張なんてせずなんとも思っていないんだろうなあというところが好きです。鈴懸好き。
剣技では鈴懸の無双状態が面白かったです。天狗の子つよい。
奇魂EDは剣取りを叶え家光の側近となるロマンあふれるものでしたが、2人和やかに暮らす…ということができないのは悲しいですね。
城勤めになるということはそういうことですよね、一町医者のほうが奥さん孝行できるという。鈴懸が成果をあげ武士になることができたら、2人はもうちょっと一緒にいられる理由ができる。
和魂EDの妖怪大戦争感も良いです。あのまま鈴懸は精悍な青年になるんだろう、というポテンシャルの高さをひしひしと感じました。鈴懸があと7つ歳をとれば、剣が君抱かれたいキャラナンバーワンの座を容易に射止めただろう…。
抱かれたいというか、主人公を抱いてほしいわ。それが我々の願い…祈り…。
幸魂EDは収まるところに収まった~Fin.~な完璧なまとまりかたでした。最高。
若夫婦の切り盛りする診療所という響きの素晴らしさ、たまらんですな。
鈴懸のみつけた人生の生き方は、きっと町医者になるとか妖怪と人間の橋渡しをするとかそういうものではなく、愛する人とともに暮らすことなのでしょうね。
彼に課された宿命は「多くの命を救うこと」でそれは人間も妖怪も1つの命として換算されているのだろうなあと思います。
宿命と生き方は異なるものなので、きっと主人公にとっても鈴懸にとっても良い意味を持てたらいいなと思いました。
思いのほか鈴懸の感想が真面目になってしまいました。
可愛い系の感想はなぜくだけて書けなくなるのか、歳をとったから母性が働くのか?
最後に
ここまで読んでくださりありがとうございました。
剣が君、本当に良いゲームでした。ファンディスクである「剣が君 百夜綴り」もバッチリ買ったのでプレイするのが楽しみです。
以上、面白い乙女ゲームをもっとプレイしたいぽぽたんでした。