『大正×対称アリス all in one』感想【ネタバレ有りand無し】
PCにて全4作品発売された『大正×対称アリス』のコンシューマー版をプレイしました!
全シナリオ読破&トロフィーコンプリート済みです。
一言感想を言うなら、信者養成ゲームです!私は大好きです笑
以下、ネタバレ無しのレビューとネタバレ有りの感想&気になる点を挙げたいと思います。
以前書いた記事をこちらのブログへお引越ししました。
2016年6月ごろの記事になります。
ネタバレ無しレビュー
シナリオ:★★★★☆(人を選ぶ。男性向けのゲームもプレイされる方には違和感なく入りこめる作品かも。私的には★5)
キャラクター:★★★★★(攻略キャラクターのメンタルが弱いことを許せる方向け)
システム:★★★★★(vitaのタッチ操作に特化したシステムでした。満足)
プレイ時間:15~20時間(1ルートあたり4時間程度)
ゲームジャンル:童話モチーフ、攻略キャラクターのメンタルが弱い、ヒロインが強い、セカイ系
こんな方にはオススメしない!
・乙女ゲームは主人公投影
・攻略キャラクターがメンタル弱いのはちょっと…。
・気になるキャラクターだけを攻略予定だ。
・理屈っぽい話は好きじゃない。
・ファンタジーやセカイ系が苦手だ。
こんな方にはオススメします!
・乙女ゲームは第三者視点でやっている。
・シナリオが面白いゲームをプレイしたい。
・シナリオライターの藤文さんが好きだ。
・セカイ系大好きどんと来い!
あらすじ
目が覚めた貴方は暗闇の中にいました。
自分が誰なのか、どうしてここにいるのか皆目つきません。
自分の声と足音と鼓動だけがこだまする暗闇の中を走り続けると、1人の少年と出会いました。
彼と手を取ると不安も悲しみも和らぎました。
二人で歩み続けると、鏡のように全てを映す結晶のあふれた場所へたどりつきます。
鏡に触れた時、様々な童話の世界へ導かれます。
そこで出会う王子様達をハッピーエンドに導くために、貴方は何ができる?
ネタバレ無しレビュー
性別も何もかも反転していて、あべこべな鏡の世界の童話の王子様を幸せにするためにヒロインちゃんこと「有栖百合花」が奮闘するお話です。
攻略キャラクターと主人公が様々な出来事を共有し、心を重ねることで芽生える恋愛模様を描く、一般的な”乙女ゲーム”とは一線を画した作品です。
でもちゃんと恋心や愛情は描いているのでご安心ください。描きたい本質(いわゆる真相ルート的な)のためにキャラクター達を犠牲にするような作品ではありません。
「この状況をどう打開するんだよ…」という問題に何度もぶち当たるわけですが、最後はちゃんとハッピーエンドになるので凄いです。
ヒロインが一番最初に迷い込む暗闇の世界で出会う少年”アリス”との卑屈で遠回りな禅問答があるのですが、理屈をこねくり回すだけの作品じゃないので…!それだけは強く伝えたいです。
世の中にはキャラクターが哲学や科学や思想をそれらしく語り、内容は追いつかない作品もあるわけですが、この作品に限ってはそういうわけではありません。
キャラクター達がどうして卑屈なことを話すのか。それは全てお話の中で語られます。
確かに乙女ゲームでは珍しい語り口でお話は進むのですが、「ライトノベル」や「男性向けのギャルゲーム」では良くとられる手法で珍しくもないので、そちらに慣れていらっしゃる方には拍子抜けするかもしれません。かくいう私も散々脅されてプレイしたので衝撃はありませんでしたし、素直に受け入れられました。
何より、どの攻略キャラクターも魅力的です。
彼らは様々な問題を抱えているわけですが、ヒロインと出会うことで向き合うことになります。
その解決も一筋縄でいかず、何度もBadedを迎えるわけですが、ちゃんとハッピーエンドは用意されているのです。
ぜひ全員攻略してあげてください。きっとお話の最後に王子様を救けてよかったなと思えるはずなので。
またキャラクター達の問題が重い!笑
目を背けたくなるような問題ばかりです。
プレイヤーのメンタルもヤラれます。私はウッとなるようなお話がとても多かった。
しかもその解決方法も荒療治も荒療治です。
何かを話そうと思えば、この作品の魅力を損ねるのでは?と話しにくくなるという…笑
シンデレラが一番乙女ゲームらしい展開を踏むわけですが、そのシンデレラルートも中々過酷なので、プレイ中は「一体このゲームはどこに進むんだ…」と恐々としていました。笑
私的には、こんなにも挑戦的な作品に出会えたことがとてもうれしいです。
同じく藤文さんが関わったゲームである『死神と少女』の時も思いましたが、女性向けのゲームからこういった題材を丁寧に描いた作品が出てきたことに意味があるかと…。
ほぼライター買いで本作品を購入した私にとって、とても満足がいくお話でした。
是非「この世界のネタバレを知ってしまった…!」という方も”ネタバレ”だけが重要な作品ではないのでプレイしてみてください。
プレイ後はプレイしてよかった…と思えるはずなので…。
以下はネタバレ有りの感想です!
未プレイの方は見ないほうが絶対お話を楽しめるので見ないでね。
ネタバレ有り感想
有栖百合花に始まって、ありすに終わる物語でしたね…!!!!!!!!!
個人的にはグランドエンドへ行くためには、「アリステア」ではなく「アリス」を選ばせるあたりがニクい!と思いました。
普通の作品なら体面を取り繕うためにも、アリステアが演じた人格であるアリスを選ばせることはないでしょう。しかも他の人格達をしっかり統合させると思うのです。
アリスや魔法使いが語るように、一つの身体に一つの精神。それが健全な状態だからと世間では言われているから。また記憶が不完全なのは生きづらいですしね。
多重人格を描く作品においては、”精神の統合”が焦点になる場合が多いです。
ダブルキャスト等々、本人から生み出された他の人格たちを納得させ、もしくは殺し、眠りにつかせる。
乙女ゲームでパッと思いついたのは、うたプリの那月と砂月です。彼もまた那月の中に帰りました。これはこれでとても好きなお話で、納得がいっています。
私は多重人格関係のお話で、その後に他の人格を残す展開は「逃げ」に近いのであまり好きではありませんでした。
しかし対アリは多数決という民主主義的手法(笑)を得ることでプレイヤーを納得させます。もちろんこれまで百合花とキャラクターを見守ってきたプレイヤーが、彼らの想い出を大切に思うからこそ彼らの思いも痛いほどわかるわけですが…。
その他人格を残す選択を作品の全てを通して納得させます。
いかに突拍子のない設定や珍しい展開をみせるゲームは世の中に存在しますが、それでもプレイヤーを納得させることに焦点をおかないと、ただの駄作として残りがちです。
製作者側が独りよがりにならず、それこそ「王子様を救けるお話」として全力を注いだことがこの作品の完成度に繋がったのだなあと思います。
いやー本当にこの作品が好きです。これは信者養成ゲームです。
物語の手法は乙女ゲームではあまりみない(私の少ない乙女ゲーム歴ではやったことがない)ですし、キャラクターは皆魅力的だし、ヒロイン厨は満足するゲームだし…。
乙女ゲームは全体的にまだ発展市場で、完成度の高い作品が飽和していません。この作品に魅入られた人、そして拒絶反応を示すひと、沢山現れるかと思います。
それでも私は好きだ!と主張しだすような、そんな作品です。
そうです、冒頭のアリスを選んだ問題。
これまで滔々と語られてきた”アリステア”との物語を否定するのですから…!少しショックを受けました。
でも百合花はアリスしか知らないわけですからね。至極、理論的な選択肢です…。
これが対アリなんだろうなあと思います。夢の中の世界に根ざしたものは、残酷なほど容赦のない現実です。
攻略キャラクターの中から1人を選べとかいう命題をつきつけるゲームですしね…。
話が若干逸れますが、乙女ゲームにおいて攻略キャラクター達の中から1人を選ぶというのはかなり殺生なことだと思います。
全員がこれまで別の時間軸で愛した1人(対アリの場合は全員同じ軸だけど)だし、プレイヤーには思い入れがあります。そしてキャラクター達はヒロインをそれぞれのやり方で愛しています。
遙かなる時空の中でのコミカライズ版で、キャラクター達がみなヒロインを好きになっちゃって、キャラもヒロインもそれぞれの視点で思い悩むのです。
結局、ヒロインが悲しむのが嫌だったり誰かとの軋轢が嫌だったりで恋心を捨てるキャラ、片思いであることを決意するキャラ、かなわなくてもいいからヒロインにアタックするキャラ…
そしてヒロインは皆好きなのに選ばないといけなくなります。彼らとの関係を保つには、誰か1人を選ばないといけないのです。
読んでいる時は辛くて辛くて、こんな悲しいお話があってたまるか!と憤ったのを覚えています。
だからこそ対アリの結末は凄く好きです。常々私が求める、ヒロインちゃんが分裂したゲームですし笑
もちろん納得させる結末だしね!それに尽きる!
いやー語りたいことが沢山あります。
精神病をモチーフにしたゲームは男性向けゲームにはありがちです。
夢の世界をモチーフにしたゲームも沢山あります。ユメミルクスリとかリトルバスターズとかちょっと違うけどネコかわいがりとか!
乙女ゲームにも夢の世界で経験値を積んで現実に立ち向かうお話が増えてもいいのにな…と常々思っていたので、凄く楽しかった!
また死神と少女もそうでしたが、いちいちキャラクター達が理屈っぽい上に博識なキャラが様々な問いかけをしてくるのも乙女ゲームにはあまりない雰囲気ですね。
第八の人格である百合花が、枕元で語りかける百合花を出し抜くEDも度肝を抜かれましたし、グランドエンドで幸せになれて本当によかったなあと(;_;)
確かに現実世界の百合花もある程度優秀な人間なのでしょう。夢の世界では、アリステア主観によってかなり理想化されたのだと思いますが。
ちゃーんとアリスと百合花が幸せになれて、しかも百合花は子供の頃の大切な想い出を独占できるというのが凄いと思いました。現実の百合花への意趣返しであり最後の反抗ですね。
あとはアリス・アリステア役の声優の松岡さんの演技が凄いですね。人格別に演じ分けていてかつ最初は全て松岡さんの声だと全然気が付きませんでした。。叫ぶシーンとかは熱が入りすぎてビクっとしました。
好きなキャラは赤ずきんです!可愛いですよね笑
全員魅力的だけど選ぶならという感じですが、真面目すぎるところも弱さもいいなあと思います。あと童貞キャラが純粋に好きです。大好き。
赤ずきんが過去に耐え切れず叫びだすシーンや百合花ちゃんを助けたいが故に耐えるシーンとか声優の前野さんが迫真の演技すぎて胸が痛くなりました。
そういえばシンデレラルートは買い物依存症を取り上げており早速自分に思い当たる部分もありダメージを受けてとんでもない作品だと思いました。
どのルートも「どうやって結末に至るんだ」とヒヤヒヤしておりましたが、一番わからなかったのがグレーテル。こういう風にお菓子の家を出て行くというか破壊するのかと!あとグレーテルと寝たら即終了というのも面白かったです。
アリステア的には”母親”に代わる一心に甘えられる存在が欲しかったし、それこそ愛されたかったから生まれた存在であるグレーテル。別人格を作らないと自分を愛せず、安寧とした幸福を受け入れられなかったアリステアはとても不器用で悲しい人間だなあとしみじみ…。
グレーテルの食べていたお菓子は精神安定剤とか睡眠薬とかそういうものなのかな?
白雪は真実の鏡をみたから他キャラ達とは一歩引いた視点で物語をみている。というのも面白かった。シンデレラの時もかぐやの時も、いつだって白雪は正しかった。
そのど正論っぷりが、母親が彼(白雪という人格)から逃げていたという事実を受け入れなければならないと苦悩させるのは悲しいですね。
毒りんごってこれかよ!と全プレイヤーが思ったはず。
母親もすごく悲しい人生ですね。夢をみることのできる純真な女性が、現実に潰されていく。そんなお母さんに頼れなかったところなどアリステアの優しさが伝わりますね。
子どもだから母親を守ることができないというのは辛いなあ。彼女に手を差し伸べてくれる人が1人でもいれば、この物語は無かったのだろうけれど。
そういえば赤ずきんルートで「獣耳が生えている自分はお母さんの本当の子どもじゃない」ですとか、白雪ルートで母親が突然ありすに乗り換えるところは、アリステアが孤独を感じすぎたゆえの捨てられ不安を象徴しているのでしょうか。
本当の子どもじゃないから愛してくれないのだ、と納得しようとしていたのかも。だから母は最近冷たくあたるのだと…。
逆に言えば本当の子どもなら愛してくれるという思考を拗らせたのがグレーテルなのだろうなあ。
かぐやのお話もとてもしんどかったですね。元カノ達(とその家族)酷すぎるだろ…。でも百合花ちゃんが自分も彼をもの扱いしているのでは?と思い当たるあたりでハッとしました。・・・・まあ実際は駒なんですけど!しかし、独占したいと思う気持ちは誰かをモノ扱いしているのでしょうか。自主性を尊重したいけれど、その自主性がないかぐやという難しい問題をあんな風に解決するのには笑いましたが。
魔法使いはバッドエンドを踏むたびに愉快な言葉をかけてくれるので好きでしたが、唯一外側の百合花を愛した人というのはなんとも切ないですね。
そんな彼にもハッピーエンドを示唆してくれるのは最高です。
あの空間でずっとチェスしているのだろうか、あの二人は。
シンデレラさんは一番乙女らしいのでキュンキュンしました。いやー、ダメ男が愛の力で更生するのはとてもいいですね!笑
失踪したシンデレラを探しだす百合花ちゃんも良かったです。ヒロインは積極的すぎる子がすきです。
いや本当に面白かった…。書ききれない…。あと謎という謎を殆ど残さず書ききったというのも評価が高いなあと思います。
藤文さんといえば「死神と少女」で、私はその作品がとても好きでした。
ネタバレになるので詳細は書けませんが、プレイ後は色々考えさせられました。
死神と少女に比べれば、対アリは非常に現実的な話で、プレイ後に考察することもあまりありませんね。(詳細がよくわからないのは母親を取り囲んでいた世界とグレーテル傷害事件ぐらいかな?)
でもそれに匹敵するぐらいには、大好きな作品になりました。思い切って買ってよかったです。
これからキャラクターCDを買うぞ!わーい。
ファンディスクや続編を望めないのだけが残念なので、公式からちょっとしたアフターエピソードの小説とかドラマCDが発売される日を待ち望みながら…。
最後にここまで読んでくださってありがとうございました!
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